東京アウトサイダー

kannbenn2004-06-28


一昨日、炎天下の上野公園。
西郷さんの目の届く範囲に居たぼく。
木陰のベンチに座って、涼んでおりました。
周りでは観光客がカメラを片手に歩き回り、おっさん・おばはんは世間話に花を咲かせています。
平和な日常、昼下がり。
そんな光景を眺めながら、まったりしていたぼく。
と向こうの方から60ぐらいの短髪、ポロシャツ、ハーフパンツのおっちゃんが歩いてきます。
ぼくの近くに幾つか空いているベンチがあったんで、それ目当てかなと別段気にも留めていませんでした。
しかし、おっちゃんは他の空き空きベンチには目もくれず、何とぼくの座っているベンチに向かってくるではありませんか。
まさか。
まさかでした。
おっちゃん、ぼくの座ってるベンチに、ぼくの真横に座りました。
何や何や!
第一種警戒態勢。
少し身構えます。
とおっちゃん、
『兄ちゃん、今日は暑いねえ。』
ぼく「暑いですねえ。何か30度超えるみたいですよ。」
世間話をしたかっただけかあ。
何とも気のいい感じのおっちゃんであります。
ここからは、おっちゃんとの会話をノーカットでお送りします。

おっちゃん:『何してるの?』
ぼく:「いやあ、何となく涼みにきてるんですよ。」
お:『ああそう。お兄ちゃん関西の人?』
ぼ:「まあ、そうですねえ。」
お:『東京には何で来てるの?』
ぼ:「いやあ、実は東京に住もうと思ってて、それで部屋を探しに来てるんですよ。」
お:『なるほど。もう東京に出てきてからは長いの?』
ぼ:「まだ、一週間ぐらいですよ。」
お:『ホテルか何か泊まってるの?』
ぼ:「お金ないんで、サウナとかマンガ喫茶とかに泊まってます。」
お:『もう一週間になるんだ。』
おっちゃん、ここでぼくの股間にソフトタッチ。ヒット&アウェイで。
一瞬、戸惑うぼく。
お:『こっちの方はどうしてるの?』
ぼ:「いやまあー何とか自分で。」
お:『どのくらい?週に2回ぐらい?』
ぼ:「ええ、いやあ、まあ…」
はっきりしないぼくの答えを聞かず、おっちゃん再びぼくの股間にタッチ。
さっきよりスピードが増す。
ポーン!という感じ。
またもヒット&アウェイ。
気にしてない振りしてぼく。
ぼ:「まあ人並みにやってます。」
お:『たまってるんじゃないの?』
ぼ:「まあそんなね、どこでも自由に出来るもんじゃないですからねえ。」
ぼく、この人は東京のお父さんになりたいのかなと思い始める。
と思ったのも束の間、おっちゃん、再びぼくの股間にタッチ。
今度はタッチ&ストップ。
股間付近で静止。
お:『兄ちゃん、頼みがあるんやけど。』
ぼ:「…なんですか?」
おっちゃん、顔をこちらに一気に近付けて、小声で、
お:『そこのトイレで抜かしてくれんかなあ?』
ぼ:「えっ?」
お:『兄ちゃんのを。頼むわ。』
ぼく、フリーズドライ
一瞬、大声でリアクション&体仰け反らせそうになるも、何とかこれを思いとどまる。
下手に事を荒立てて、刺激するとマズイと脳みそが判断。
おっちゃん、目を輝かせて、懇願の眼差し。
股間に覆いかぶさった手、微妙に振動。震度1。
ぼ:「またまた、そんな冗談やめて下さいよ!」
お:『兄ちゃん、わし、本気やで。』
映画『蛍の墓』の節子状態。
さらにおっちゃんの目本気になる。
ぼ:「いやあ、おっちゃん、ぼくそっちの趣味はないからさ。ごめんやけど無理やわ。」
お:『どうしても無理か?』
ぼ:「さすがに無理やなあ!ごめんやけど、そういうお店とか行った方がいいんじゃないかなあ。」
おっちゃん、悲しそうな目。
股間部の手、振動を止め、股間から離れる。
ぼく、読み取られないようにしつつ安堵。
おっちゃん、前に顔を向けて寂しそうな表情。
何ともいえない時間が流れる。
内心、ドキドキしながらおっちゃんの出方を待つ。
・・・。
お:『じゃあわしはこれで…』
おっちゃん別れの挨拶。
何とかなった!と安心。
おっちゃん、立ち上がろうとする。
とその時。
お:『最後に。』
おっちゃん、ぼくの股間に再びタッチ。
名残惜しそうに擦る。
水晶玉のように擦る。
そしてニヤッと笑う。
立ち去る。
ぼく、放心状態。
どこを見るでもなく、視線を宙に彷徨わせる。
とそこに、どこからともなく日傘を指した中年女性が現れる。
おばちゃん:お兄さん、教会に行きませんか?
ぼく:教会?
おばちゃん:そう荻窪にある教会なんですけど、決して怪しい者ではありませんから。
世の中は上手く出来ているようだ。