迷いの森

kannbenn2004-06-27


渋谷駅前。午後3時。
黒山の巨大な人波が描く流れに気圧される。
まるで大きな魚に襲われないために、身を寄せ合い巨大魚のシルエットを形作る魚群のよう。
渋谷。
渋谷センター街
日曜日の渋谷センター街
ヤマンバわんさか。
男は皆、K−1中量級の魔裟斗みたいな格好。
何というかそういう格好をしてないと存在できない感覚。
風景として溶け込めない感覚を覚えた。
何かぼくは許されてない。
その後、サラリーマンの聖地新橋へ。
新橋駅前。
渋谷とは打って変わって平穏。
落ち着き払っている。
どうしてもこちらに安心感を、好感を覚える。
寝床を探して、駅前を歩く。
基本的に飲食店とパチンコ屋がメイン。
カプセルホテル・サウナも多い。
さすがサラリーマンの聖地と納得。
通りに面している所にはマンガ喫茶は見当たらず。
路地へと足を向ける。
はじめて見た。
ポン引きが路地の中央に並んでいる。
その数、15人。
ぼく、侍の心持ち。
次から次へと目の前にポン引きが立ちはだかる。
それらを次から次へと無視していく。
どうせやったら裏路地から、さらにポン引きが山のように出てきたらいいのに。
チャンバラの勢いで切り捨てて行く。
そのまま何も考えずに真っ直ぐ歩いて行く。
真っ直ぐ歩いて行く。
次第に明かりが少なくなってくる。
『まずいなあ。』
と思った頃には時既に遅し。
コンクリートジャングルの中に迷い込む。
虎ノ門。。。
日曜日・深夜。
通りを駆け抜けて行く、無数の車とは対照的に、歩道には誰もいない。
急に心細くなる。
完全消灯のビルディングに囲まれたぼく。
ビルディングは大木のよう。
ここは闇夜の森の中。
あっ!森ビルあった。
グレイトジャーニー気分では歩けない。
ポン引きを切り捨てて、肩で風切って歩いてるからこんな事になるんや!
自責の念。
ビルディング→横断歩道→ビルディング→横断歩道…の繰り返し。
同じ所をグルグル回ってる感に襲われる。
あきらめて新橋に元来た道を戻ればいいのに。
ポン引きに再会するのが嫌で踵を返せない。
もう抜け出せないんじゃなかろうか。
そんなはずないのに。
そんなこんなで小一時間。
下を俯いてジャングルを彷徨う。
ふと顔を上げて眺め見たビルとビルの切れ間。
そこには煌々と煌めくトキオ・タワー。
森の中で迷ったぼくは、トキオの主に出会った。
正直、感動して涙が出そうになった。
主に出会ったぼくは踵を返す。
主に見送られて再び新橋。
今、マンガ喫茶