俺の周りはピエロばかり
深夜、大通りから一歩路地に入る。
はい!真っ暗。
見知らぬ街の、見知らぬ道を歩く。
人影まばらで、はい寂しい。
と、誰もいなかったはずの僕の眼前に人影が飛び込む。
参ったなあと思いつつ、気配を消して横を通り過ぎようとする。
怖いからあまり見ないようにしながら、横目で見る。
全くポロシャツ。
全くスラックス。
普通のおっさん。
『ちょっとお兄さん。』
呼び止められた。
平静を装いながら振り返る。
脳みその片隅では「振り返ってはいけない。」と思いつつ。
シェーン!カムバック!
そう昔から、カッコいい男は後ろを振り返らないものだと決まっている。
僕は振り返ってしまう。
マジ顔のおっさん。
ゆっくり近付いて来る。
ぼく、普通っぽく「何ですか?」
『あのねお兄さん。。。好きでしょう?』
いくぞー!!ポン・ビキ・ダアー!!!
しかも、声が1オクターブ高い。そして片言。
本人じゃない感じだ。
『お店はすぐ後ろのあの店・・・』
さらっと説明を始めるおっさん。
どうやら、『健康』と一般にいわれるお店らしい。
ぼく「いやあお金ないんで。。。」苦笑い。
『そんなあ!じゃあホントは30分8000円だけど、お兄さんだけ5000円にするよ!』
出たあーー!プライス!!デストローーーイ!!!
「いや、ほんとにお金ないんで。。。勘弁してください。」
『実はね、お兄さん、すごいかわいい21歳の女の子相手するよ!』
絶対、可愛い子なんか出て来ない。
おっさん腕を引っ張る。
魔界の入り口へ僕を引っ張る。
ぼく、中畑清みたいな渋い表情。
気づけば、おっさんとぼく、顔と顔の距離、イタリア人の距離。
もう持ちこたえられない。マウンドを降りたい。
「リリーフカー!来い!!」
と願っても、セットアッパーもストッパーもいない。
来るはずない。
僕の前に道はない。ある!
僕の後ろに道は出来る。出来ない!
嗚呼!!
結論、逃走。
『あっ!ちょっとお兄さん、ひどいよ!後悔するよ!白状者。』
ぼくは正直者。
ホンマに無駄な金無い。
追加して昼間の照りつける太陽で、臭い。
総合的に考えて不可能。
しかし、やたらめったらと声を掛けられる。
昨日は45分、3000円のキャバクラに誘われた。
何でもポンビキの兄ちゃんがホンマは4000円の所、1000円自腹を切るという。
この21世紀を迎えた現代日本に、3000円のキャバクラなんかあるはずない。
ありえない。
御伽噺だ。
それはオイルショックの頃の話だ。
・・・ルショックの頃の話だ。
・・・クの頃の話だ。
・・・なしだ。
梨田。
追伸。
渋谷八方逃走中のため。
東京東側からあまり動けなくなった。